私法上の法形式が否認されるケース

 OECDガイドラインにおいて、移転価格算定上、正確に描写された当事者間の取引を、否認することができる状況を説明している。

 「否認は、議論を巻き起こし、かつ、二重課税の原因となり得るため、実際の取引の特性を見定めた上で、当該取引に独立企業間原則を適用するように、かつ、独立企業間価格の設定が難しいという理由だけで否認されることがないように、あらゆる努力がなされるべきである。比較可能な状況(すなわち、検証対象取引が行われた際の経済的な特徴が、非関連者間取引の経済的特性と同じ場合)において非関連者間で同様の取引が行われている場合、否認は適用されない。

 重要なことは、その取引が独立企業間には見られないからと言って、当該取引が否認されるべきとは言えないということである。関連者は、独立企業よりも遥かに多様な契約を結ぶ能力を有するかもしれないし、独立企業間では見られないか、又はごく稀にしか見られないような特徴を有する取引を締結することがあるかもしれない。また、事業上の正当な理由によりそうする場合もある。

 取引に関する取決めが、全体としてみると、比較可能な状況においてビジネス上合理的に行動する独立企業が採用するであろう取決めと異なっており、このことが、当事者双方の見通しや取引開始時にそれぞれが実際に利用できた選択肢を踏まえて当事者双方が受け入れ可能としたであろう価格の算定を妨げる場合、正確に描写された取引は否認され、場合によっては、取引が引き直されるかもしれない。」