OECDガイドライン上の取り扱い

OECDガイドラインでは以下の通りとされている。

移転価格文書は、機能分析及び経済分析が正確で関連性を有しているかを判断し、適用された移転価格算出手法の妥当性を確認するため、定期的に検証することが推奨される。原則として、マスターファイル、ローカルファイル及び国別報告書は、毎年検証し、更新されるべきである。しかし、多くの状況においては、事業概要、機能分析及び比較対象取引の記述は、1年で著しく変更しないであろうと認められる。

納税者のコンプライアンス上の負担を軽減するために、税務当局は、事業状況が変わらない限りにおいて、ローカルファイルの構成要素である比較対象取引のデータベース検索を、毎年ではなく、3年ごとの更新とすることができる。ただし、独立企業原則の信頼性を確保するために、比較対象取引の財務データは、毎年更新されるべきである。

従って、比較対象企業の選定は3年ごとの更新を行い、その後の1~2年間は選定された比較対象企業の財務情報の更新を通じ独立企業間レンジのアップデートのみによって対応することも認められている。

実務上の論点

実務上、比較対象企業の財務データの更新を行う際に、当該比較対象企業に定量スクリーニング・定性スクリーニングを改めて実施し、比較可能性の確認を改めて行うかどうかという論点が生じる。例えば、TNMM(取引単位営業利益法)を選定しているケースにおいて当該比較対象企業の最新の財務情報によれば、比較対象企業の選定の際の定量スクリーニング基準に抵触するというケースが生じ得る。

実務上の対応

この点、OECDガイドラインにおいてコンプライアンス上の負担を考慮している趣旨からすれば、財務情報の更新時に LFに 改めて比較可能性の検討結果は記載せず、前回選定された比較対象企業の財務情報の更新を単純に行うことも認められると解すべきである。

ただし、財務情報の更新時における定量基準・定性基準への抵触は比較可能性の欠如を示しているものであることから、その翌年度においては、例え3年経過していなくとも、比較対象企業の再選定を行うことが必要であると考えられる。