判例における独立価格比準法(CUP法)の解説

 独立価格比準法(これと同等の方法を含む。以下同じ。)は,国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階,取引数量その他が同様の状況の下で売買した非関連者間取引の対価の額に直接比準し,その対価の額に相当する金額をもって独立企業間価格とする算定方法である。

 したがって,ある非関連者間取引をもって,当該事案においてその対価の額が独立企業間価格を超え又はこれに満たないものであるか否かの検証の対象とされている国外関連取引(以下「検証対象取引」ともいう。)との比較対象取引とするためには,当該非関連者間取引が,① 検証対象取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を,② 検証対象取引と取引段階,取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引であることが,その要件となる。

 そして,上記①の比較対象取引に係る棚卸資産が検証対象取引に係る棚卸資産と同種のものであるというためには,比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産とがその性状,構造,機能等の面において同種のものである必要があるところ,その同種性の有無は,比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産との間の性状,構造,機能等の差異がそれらの棚卸資産の間に対価の額の差異を生じさせる差異であるか否かによって判定すべきものであり,また,上記②の比較対象取引が検証対象取引と同様の状況の下で売買した取引であるか否かは,取引段階が当該棚卸資産の製造から消費者による購入までの間のどの段階に属するか(小売であるか卸売であるか等),取引数量が価格に影響を与える場合には取引数量,季節要因により又は一般的な経済市況の変化により価格が変動する場合には取引時期,棚卸資産の引渡条件が積地条件か揚地条件か,支払条件,当該市場の地理的位置,経済や社会の構造,消費者の消費性向,政府の規制などの市場の条件,特許権,商標権等の使用許諾,ノウハウの提供の有無等の諸般の事情を総合的に考慮して判定すべきものである。     

 もっとも,比較対象取引が検証対象取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該検証対象取引と取引段階,取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引である場合においても,その差異により生じる対価の額の差を調整することができるときは,その調整(差異調整)を行った後の対価の額に相当する金額をもって独立企業間価格とすることができるが,そのような差異調整を行うことができない場合には,当該比較対象取引の対価の額に比準して独立企業間価格を算定することはできないこととなる。