行政法の最も重要な原則は、19世紀に成立したドイツの行政法理論から輸入された「法律による行政の原理」(「実質的法治主義」とも呼ばれる)である。「法律は憲法に適合するように作られ、解釈されねばならない。行政機関は立法機関が作った法律を適切に執行し、司法はその逸脱を監視する」という権力分立思想に源泉をもつ概念である(阿部2008: 92)。

  一方で、租税法律主義の淵源は「法律による行政の原理」よりも古く、国王の課税権に制限を加えたところのマグナ・カルタ(1215年)に萌芽をみるところの「ルール・オブ・ロー」原則まで遡ることができる。しかし、英米法の「ルール・オブ・ロー」とドイツ法の「法律による行政の原理」は、今日ではほぼ同義に用いられ、同一内容の法命題になっていると理解されている(金子2016: 103;磯部2004: 20)。