国別報告書では、多国籍企業グループが事業を行う各国間のグローバル所得配分、納税額及び経済活動が行われる場所の特定の指標について、国ごと集計の記載が求められる。また、国別報告書では、財務情報が報告されるあらゆる構成事業体名、居住地と設立地が異なる場合は設立地、構成事業体が行う主要な事業活動の性質を含むリスト作成が求められる。

 上記のような情報を含む国別報告書は、税務当局にとってハイレベルな移転価格リスク評価に有用となる。また、税務当局が、他のBEPSに関連するリスクを評価する場合や、適切な場合には経済分析及び統計分析に使用することもあろう。

 そして、国別報告書の提出に伴い高まる移転価格リスクを検討する上で最も脅威となるのは、何よりも自動交換の枠組みを通じ世界の税務当局間でがなされるという点である。

 国別報告書のデータにより多国籍企業グループの全世界利益配分が明らかになる。したがって、本邦のみならず現地の税務当局も国別報告書の入手を通じハイレベルな移転価格リスクの評価を行い、移転価格リスクの発現機会が増加することは間違いない。

 納税者には移転価格ポリシーの運用や、適切な移転価格文書化を通じたディフェンス形成を行うことがより一層重要となってくるものと言えよう。