ローカルファイルにおいては、産業分析として、「当該国外関連取引に係る資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引に係る市場に関する分析その他当該市場に関する事項」を記載するものとされている。

 産業分析の章における記載事項を、ここでは、国税庁より公表されている「(ローカルファイル)作成に当たっての例示集」に基づき、説明する。

 産業分析では、国外関連取引の対象となる商品、製品、役務等に係る地理的市場の特性、政府の政策(注)及び為替変動の影響等が説明される。

 ここでは、国外関連取引の対象となっている商品若しくは製品が販売されている又は役務が提供されている地理的市場を特定した上で、その市場の概要及びその市場の特有の状況が国外関連取引に係る対価の額又は損益の額に与える影響を記載する必要がある。

 具体的には、当該商品又は製品が販売されている市場規模、当該役務が提供されている市場規模、法人グループのシェア、地理的に特有な事情、許認可の状況、国外関連取引を行っている法人又は国外関連者の所在する国又は地域における政府の政策が与える影響、為替の影響等が該当する。

 併せて、当該国外関連取引の当事者がどの取引段階に属するのか(小売又は卸売、一次問屋又は二次問屋の別)を明らかにすることも必要となる。

 (注) 政府の政策とは、法令、行政処分、行政指導その他の行政上の行為による価格に対する規制、優遇税制、金利に対する規制、使用料等の支払に対する規制、補助金の交付、ダンピングを防止するための課税、外国為替の管理等の政策をいう。

 必要な情報として、以下が例示されている。

・国外関連取引の対象となる商品若しくは製品が販売されている又は役務が提供される地理的市場に係る情報

※ 例えば、商品、製品又は役務の需要、市場規模、地理的に特有な事情(例:人件費水準、市場価格の水準、需要の変動、顧客の嗜好)、許認可の状況が該当する。

・市場における競争の概要

※ 例えば、法人グループ及び競合他社のシェア、競合他社の名称が該当する。

・市場における政府の政策(例:関税の優遇)の内容、当該政策が国外関連取引に係る対価の額又は損益の額に与える影響

・国外関連取引に係る対価の額又は損益の額に影響を与える為替の変動状況

・その他国外関連取引に係る対価の額又は損益の額に影響を与える市場の要因に係る情報

・(計算している場合)影響額

 この産業分析の章はしばし後回しにされがちであるが、本分析を通じて、移転価格以外の外部要因が国外関連取引に係る損益に影響を与えるものとして、移転価格の結論付けに直接的につなげていくこともあるため、重要なパートであると考えておく必要がある。